ＤＶＤが１５００円で手に入る今となっては信じられないような話かもしれないが、２０年くらい前には、あのレンタルビデオ店に置いてあるようなシネスコやヴィスタがスタンダードにトリミングされている劣悪な画質のビデオが、１本３万円以上もして、なかなか一般市民の手には入らなかったものだ。

そんな頃、ビデオ販売店のショーケースを毎日見に来る、学校帰りと思われるひとりの少女がいたそうだ。その少女は毎日毎日そのショーケースを覗き込んではため息をついて帰っていったらしい。

しかし、ある日、その少女が息せき切ってその販売店に駆け込んできたかと思うと、開口一番「『ロミオとジュリエット』をください！」と言ったそうだ。

その少女、おそらくは貯金をはたいて買ったであろうそのビデオを大切そうに、本当に大切そうに両手に抱えて帰っていったらしい。

そんな話をどこかで読んだことがある。

別にこの映画に限ることではないが、その少女の気持ちは本当によくわかる。自分も当時ほれ込んでいた映画のビデオがどれほど欲しかったことか…。

そう思うと、今は本当に幸せな時代になったと思う。

偶然にも、このたび『ロミオとジュリエット』のＤＶＤが発売されることになったらしい（もうされたのかな？）。

しかし、こんな幸せな時代であるからこそ、その時のその少女のような気持ちを忘れることなく、大好きな映画に接していきたいと思う今日この頃である。