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[コメント] 勝手に逃げろ/人生(1979/スイス=仏)

本作は大雑把に云って、前半はナタリー・バイ、後半はイザベル・ユペールのパートと云える。接続するのはポール・ゴダールという役名のジャック・デュトロン
ゑぎ

 ジャック・デュトロンが映画館に並んでいる場面。接続したのは『街の灯』と云ってもいいだろう。本作は、デュトロンが主役と思えなくもないが、ユペールとはあまり絡まないので、後半は、ほとんど彼が消えている。ラストは彼が締めるけれど。

 開巻は空(青空と雲)を左へパンするショット。これけっこう長い。おまけにカクカクしている。ラストカットは、街中の路地のような場所を撮ったショットで、画面奥には、中途半端にバイクが半分映っていたりする未整理なショットだ。普通なら片付けるんじゃないかと思いながら見る。つまり、決して完璧な世界の構築が目指されているわけではない、と分かる。

 音や音楽のフェード効果の頻出は相変わらずだが、本作時点で盛んに試されていて顕著に見えるのは、不思議なモーション制御だ。例えば自転車に乗るバイを、恣意的にも思えるようなかたちでスローモーションのスピードを変える。短い時間ストップしたりも。あるいは、沿道の木立のショットで、超スローで流れるような軌跡を現出せしめたりする。さらに終盤、バイがテーブル越しの男からジャンプされて倒されるショットは、モーションコントロールでショットの強さが倍加されているのだ。

 また、相変わらず、ということで云うと、意味不明だが、やっぱりメッチャ面白いと思えるシーンの連続だということだ。特に、序盤から臀部への執着が繰り返し描かれる部分が好き。ポール−デュトロンはホテルのボーイから求愛され、後ろからして欲しいと云われる、バイに牛の世話を教えてくれた女性は牛に向かって尻を出す(舐めてもらうのか?)、そして本作の白眉と云っていい部分が、ユペールと、社長とその部下と、もう一人の娼婦の4人が数珠つなぎになるシーンだろう。社長は娼婦の胸を足で触る、娼婦は部下のを咥える、部下はユペールの尻を舐める、ユペールは、ヤメテ!と痴漢に云うように云い、社長の唇に口紅を塗る。なんじゃこりゃ!でも面白い!

(評価:★4)

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