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[コメント] ランド・オブ・ザ・デッド(2005/米=カナダ=仏)

オーケンが、オリジナルの『ドーン・オブ・ザ・デッド』はアメリカンニューシネマ――みたいなことを言っていた。言いえて妙だと思った。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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かつて感情を持っていた存在が、それを失い、悲しみを忘れたとき、逆説的に発散する哀しみは、実は純粋かつ静謐なもので、時に美しくさえ見えた。またそうであるが故に、ゾンビは唯一無二の存在だった。そして、そんな彼らが溢れかえった世界は、地獄でありながら、一方で楽園に似ていた。そこに放り込まれたとき、人間は、法律や道徳と言った、現実社会におけるあまたの不純な制約から解き放たれるからだ。

頭は悪いが行動力はあるオタクの連れが自腹で轟天号作ろうとしたらできちゃったみたいな装甲車に無理やり乗っけられてみたいな展開に、アーシアが金網ケージでゾンビと取っ組み合いとか、よじ登って蹴ったりとか、いくらでも見ていられる。

楽しんだものの、乗り切れない部分は確かにあった。ここに来てロメロはゾンビを変質させようとしたわけだが、娯楽のためにそうしたのか、それともかつてショッピングモールに意味を込めたように、ガチだったのか、どっちだったのだろう? 少なくとも、自分は、悲しみを取り戻してしまった彼らをどう受け止めればいいのか解らなかった。確かに残酷描写の質感には本家の底力を感じ、唸ったものの、一方で、かつて彼らが発散していた“哀”は感じられなかった。老舗シリーズものの新作を見るにつけ付き纏う、いつものモヤモヤに囚われつつも、ラストの主人公の結論に「ほぉ……」と低く感嘆の呟きを発するのみである。

(評価:★3)

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