[コメント] 空中庭園(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
思えば小泉今日子さんが大人の演技に入りだしたのは、紛れもなく『雪に願いを』からだったと思うんですね。あの少し寂れた演技というのは、彼女のキャリアとしてはかなりエポックだったと思うんです。
そして前後しますが、2008年に作られた『トウキョウ・ソナタ』。
これはまた凄い内容でしたが、やはり小泉今日子さんは主婦を演じています。しかもこの空中庭園を上回るようなアクティブな主婦に変化する過程が面白かった。
いずれの作品も大変ニッチな作品ですよね。そして崩壊する家族が描かれているという点においても、なかなかの作品です。
この映画を冒頭から見ていて、「これはいい映画だな」と思わせたのは、カメラの反転です。カメラが団地を写しているうちに、どんどん傾斜してゆく。そして逆さまになったところにタイトルが浮かびます。こういうオープニングの作り方などで、この映画が不安定な家族を描こうとしていることがすぐにわかりますね。うまいですね。
原作は読んでいませんが、会話の中にも辛らつな言葉が飛び交っていますね。
「ばれなければ嘘は嘘にならない」
主人公の主婦が吐く言葉に重みを感じますね。
そして秘密のない家族に秘密が生まれてゆく過程も面白い。
結局家族も演じることが求められているという点でとても現実的でした。
我が家(というか私)もこの家族と同じです。私自身は家族と絶縁状態で一人で孤立しています。それが現実のことになるなんで、夢にも思っていませんでしたが、所詮人間の関係なんてはかないものなんですよね。
だからこういう現実を映画という形式で示されると、自分も一人ではないのではないかと安堵感すら漂うんですね。
生きてゆくことって本当に演じることなんですね。
2010/06/22 自宅
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。