[コメント] 私の頭の中の消しゴム(2004/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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スジンの病気がだんだん進行していくと、記憶は基本的に最近の記憶(短期記憶)から忘れていくから夫のことを忘れちゃうんですね。チョルスの顔を見ながら、前の恋人だった不倫相手の名前を呼び「愛してる」なんて言われる夫の気持ち、そしてそれに気づいて(突然普段の自分に戻ることもある)チョルスに対して申し訳なくなる気持ちが痛いぐらいにわかって、そこで涙。私はお互い好きであるが故に苦しまざるを得なくなるというシチュエーションは基本的に弱いので(他に『ラスト・プレゼント』も同様でした)すぐ涙腺が刺激されてしまいます。
こんな感じで素直にラブストーリーとして観ていたら泣けて泣けてすっごくいい映画だった、と思えるのですが、自分が福祉関係の仕事をしていたサガで、一部はまりきれなかった部分もあり、でした。
日本でドラマ化されていた時にどういうオチだったのかわからないのですが、つい考えてしまったのは 「この人、日本に住んでいたらどうだったんだろう?」ということ。
なぜなら、スジンのように、若年性のアルツハイマー病にかかった人は、日本で入れる施設など、ない。 認知症患者の施設受け入れは介護保険の施設なので40歳以上にならないと無理。 この病気は進行していくのみで治らないから、精神障害者の施設も無理(こういう施設は生活リハビリを通して社会復帰させることが目的の施設なので、治る見込みのない精神障害者は受け入れしないのが普通)。 病院は長期療養の精神病院ならなんとかなる可能性もあるかもしれないが、診療報酬の関係で、永遠に死ぬまで面倒みてくれるところではない。病院側も、そんな患者を一度受け入れたならずっと看ていかないといけなくなるので、受け入れの段階で断られることが多い。
そんな現状の中、若年性の認知症ではないけれど、交通事故で脳挫傷の後遺症から認知症のような症状が出た若い患者(家庭ではとても介護しきれない状態の方の場合)の行き場がなくて困っているという事例をいくつも聞かされている。
結末ではスジンはどこか施設のようなところに入ってはいたが、韓国には彼女のような患者を受け入れてくれるところがあるのだろうか?それとも病院か?いずれにしても日本では無理な話。「あなたはいい施設(病院?)に入れていいわねぇ」とつい思ってしまう。日本の福祉はまだまだだとも思ってしまう。
なので結末で興ざめしてしまいました。
素直に観たらすごくいい話だし、作品が悪いわけではないと思う。「忘れる」ことを 「過去の悪いことを忘れる」といういい意味でとらえられていた前半と「すべて忘れてしまい、そのことによってまわりを傷つけてしまう怖さ」としてとらえた後半という 構成はうまいな、なんて思いましたし。
ああ、やっぱり素直に観て感動したかったかも。。。
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