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[コメント] ランド・オブ・プレンティ(2004/米=独)

ヴェンダースには「達観」とか「老練」なんて言葉は相応しくない。初期作から20年以上を経ても、なおどこかに「青年ヴェンダース」が見え隠れしていることが、逆に個人的にはいとおしかった。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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初期作から20年以上経ちながらも、未だにどこかしら青い。正直なトコロ、映像感覚は時に自主制作臭すら漂うし、音楽の扱いも「その映画のための音楽」なんてことより、「ああ好きなんだねそういう音楽」というのがまず先に伝わってしまうし。

しかし不思議なことに、その青さを全く屈折させずに自然に表出することによって、時にそれは未熟さではなく、「ひたむきさ」として作品に独特の優しさを湛えることにもなり得る。年を経てもなお、そういう感覚が自然に備わっている監督として、これから(結果的にだけど)益々ユニークな存在になり得るのかも、なんて思ってしまった。

要は問題なのは、選ぶ素材やテーマなのだろうな、と思う。正直なトコロ、巧妙に物語ろうとしたり、問題意識を持ったりするよりも、取るに足りないことをひたすら撮り続け、追い求めて欲しい、と個人的には思ってしまうのだけど、この作品は思ったよりも悪くなかった。

何と言えばいいのだろうか、決して深いところまで届いてるものではないのだけど、その「ひたむきな視線」は決してこの世界からなくなって欲しくない、と思えるものだった。全てをまず疑ってみることも大切なことだけど、結局は何かを信じなければ前には進めない。そして、青年ヴェンダースが見つめる先にある光は、無防備なまでの優しさに溢れるものだった。

(2006/6/18)

(評価:★4)

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