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[コメント] 静かなる決闘(1949/日)

理不尽でもあるが、自分の責任でもある。藤崎の恋の感情には少し考えさせられた。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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自分の血の中に梅毒のスピロヘーターがうようよいる。原因はともかく、常人ならそう考えただけで気が狂うだろうし、それが他人でもその人に触れることすら汚らわしく思うだろう。

感染経路は不幸といえば不幸だが、医師としてメスを「素手」で持ちながら手術をした以上、それは藤崎の責任(ミス)でもある。万一、戦場の混乱のさなか、自分が何かしら伝染病に感染していた場合、あのケースは患者に移すことにもなりかねない。医師が手術用手袋をするのは、当時でも常識、或いは義務だったのではないだろうか?

藤崎は、医師としても人間としても中田を責めなかった。仮に責めたところで、自分を更に苦しめることになるだろう。感染源たる中田に対する人間としての憎しみを克服するには、藤崎は医師である自分を徹底的に貫くしかなかったのだろう。(ラストの父親の台詞は不幸な患者から得られる希望が藤崎を導いたとしているが、私には自らを鞭打つ彼のこのスタンスのほうが、少なくとも恋人が結婚するまでの彼にとっては意味があったように思えた。)

藤崎は同時に恋人への想いも貫いた。私はこの部分には少し違和感を感じた。仮に結ばれても普通の幸せを与えられないと分っているのであれば、別れの言葉をいってほしいと思った。藤崎が恋人の幸せを祈りつつも、結婚できない理由を誰にも話さないのは、それが苦悩であると共に希望でもあったからなのだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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