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[コメント] 生きものの記録(1955/日)

お伽話的な雰囲気が強くピンと来ないのだが、そのテーマや展開に異様な力強さがある。監督の手腕も然るものながら、他にも理由があるように思う。
Myurakz

ピンと来ない理由はわかっているんです。核の恐怖が(北朝鮮問題などで再燃してきましたが)一時的であれリアルさを伴わなくなってきているから。東西冷戦が終わり、「ある日空を見上げるとミサイルが飛んでくる」っていう話が現実味を帯びなくなってきているから。もちろんこれはあくまで「一時的な」話なんだけどね。三船敏郎の力一杯全力投球の芝居もお伽話的な匂いを強めることに一役買っており、より一層リアルさを薄くしている気がします。そんな辺りでピンと来ない。

そのクセガツンと来るのが、人間の「生」というものが何と拠ん所ない物かということ。考えてみれば、太古の時代から人間の命なんて常に何者かに脅かされ続けているんですよね。昔はそれが天災であったり野生動物であったりしたわけで、転じてこの時代には核の恐怖になっている。誰もが自分だけの人生を必死で生きたいと願っているのに、常に何者かが無作為にその命を奪い続ける。

核はボタン一つで何百万人を殺すことができる異常性があるため特に際立った感を受けます。でも環境や食物など、今現在だって僕らの「生」は脅かされ続けているんでしょうね。天災より核の方が逃げ辛かったように、核よりも逃げ辛い何かによって。

そう考えるとこの作品、普遍的であるが故の直球、普遍的であるが故のお伽話っぽさっていうのが、逆に意味を持ってくるような気がします。根源的な「恐怖」なんだから小細工しないでガツンと行こう、ってところなんでしょうかね。

(評価:★3)

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