もちろんこの場合の「映画ファン」というのは三谷幸喜その人のことで、ただポンと完成品を見せられた我々より、これだけのキャストを集めて好き勝手に操ることができた監督のほうがきっと幸せだったのだろう。随所に「見て見てこのカットステキでしょー！」「こんなシーン撮りたかったの！面白いでしょー！」と自慢げに鼻の穴を広げる三谷の顔が透けて見える。

　それでもひとりよがりの作品にならず、前作『みんなのいえ』の失敗（？）をきっちり修正してくるあたりの手腕はさすが。この「お祭り映画」の観覧費1,800円は決して高くないと思った。だが、この作品で戯曲家としての貯金をほとんど使い果たしてしまった感があるのも事実で、次作こそが映画作家としての彼の本領が試されることになりそう。「三谷ファン」としては今からドキドキしてしまう。