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[コメント] 乱(1985/日)

映像全体を見てほしい映画。ただただ綺麗な映画。それでいいんじゃない?
chokobo

 影武者で完全復活をした巨匠の集大成(ライフワーク)と言える映画。当時待ちに待ったという映画だった。

 ロードショー前に絵コンテがセリフ入りで発売されたものだから、ついつい読んでしまって、映画を見た時はセリフを覚えてましまった。

 楓(原田美枝子)が次郎(根津甚八)に詰め寄るシーンは思わず涙がこぼれてしまいました。この緊迫したシーンの恐ろしいまでの迫力に圧倒されてしまった。

黒澤作品には多く悪女が現れる。山田五十鈴であり沢村貞子であり、考え方によっては京マチ子であったりする。もっと言及すれば『白痴』の原節子でさえ悪女と言える。『赤ひげ』では、常に黒澤作品の清純さを支配してきた香川京子でさえも”狂女”として扱われ、その印象たるや強烈なものがある。この作品のひとつのテーマは原田美枝子だ。

失礼ながら、その青春の反発するような若き日の原田美枝子は明らかにこの作品から演技方法が変わった。ここで経験した恐ろしいまでの悪女ぶりが、その後の演技活動に相当な影響を与えたことは十分想像できる。それほどこの作品の彼女の演技は素晴らしいものであった。

戦国時代。男性の社会。その男性を操る執念の女性。その中間に位置する狂阿弥(ピーター)が、全ての物語の語り部として効果を表してる。

緻密に計算されたシナリオと、強烈なキャラクターのぶつかり合いがこの映画に刺激を与え、なおかつ映像そのもにが至宝とも言える美しさで圧倒してくる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ナム太郎[*]

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