コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] オリバー・ツイスト(2005/英=チェコ=仏=伊)

このフィルムの痛ましさはどうだ。霧は霧らしくなく、室内光は室内光らしくない。そこに露呈されているのは、ただひとつロマン・ポランスキーの映画へのむき出しの支配欲。
ジェリー

ロマン・ポランスキーは、主人公を自分自身の投影として描くことの多いナルシスト作家だとかねてから私は考えている。今回の作品でも主人公のオリヴァーは彼自身と見て間違いない。それは彼の作家としての本質にかかわる重要な特質で、それ自体いいことでも悪いことでもない。前作のようにうまくいくこともある。しかし、抑制も節度もない今回のような監督=主人公の一体ぶりはただただベタで不快だった。

もともと、ポランスキーの映画の主人公は社会と成熟した関係を持つことが出来ない。 監督自身の幼児体験が原因とおもうが、それはともかくとして、『ローズマリーの赤ちゃん』『フランティック』『赤い航路』いずれの作品においても、社会は主人公を追いかけるとか、拘束するとか、無関心を決めこむとかするものとして描かれる。社会と主人公の関係は常に不幸の予兆をはらんだものなのである。その社会の描写が魅力的なら映画は成功するが、今回は見事に失敗した。彼の心象があまりにそのまま出てしまいすぎており、どこまでもロマン・ポランスキーという玉ねぎの皮しか出てこないという、閉鎖性が最大の欠点である。映画をコントロールしすぎたのだ。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)tkcrows[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。