[コメント] オリバー・ツイスト(2005/英=チェコ=仏=伊)
すでに『オリバー!』を観ていたことから大方の筋は把握していたのだが、つくづく主人公ながら運命の河に翻弄される葉っ端のような少年だなあ、とオリバーを観る。
まあ、子供なのだから仕方ないのだが、彼の行動といったら逃げることを除けばほとんど他人にそそのかされた事ばかりだ。そして少しばかりの善悪を見分ける目を持つことがむしろ災いし、オリバーは自ら不幸を呼び寄せることになる。だがその自業自得さゆえに彼に同情はしても、イライラするばかりで泣けたものではない。
と、ここでポランスキーのことについて。かつては偽悪的なまでに良識に挑戦する作品群を生み出していた彼が、ここまで「善意」の作品ばかり監督し続けているのはどういう訳なのだろう。妻の惨殺事件が今頃効いてきて腑抜けになったか。あるいは、あの猥画群「女の平和」を描いたオーブリー・ビアズリーが、神をも恐れぬあの絵を焼き捨ててください、と牧師に泣いて頼んだという晩年の予感のなせる業か。それがいけないとは言わないが、往年の作品に比べれば妙に老成してしまったな、との思いを隠せない。ポランスキー、すでに自分の最期を見切ったか。
いささか寂しい気分にさせてくれた凡作であった。美術でプラス1。
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