コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ホテル・ルワンダ(2004/伊=英=南アフリカ)

100万人の犠牲者に対する1200人の生還者。そのどうしようもない現実の数。物語は、歴史は生き残った者が語るものだとは言え、それは不条理だ。

ルワンダの涙』と同じ事件を題材に、こちらは1200人の命を救う英雄的な人物を話の主人公に据えている。しかし敢えて言えば、どうして、およそ100万人が殺害されたという圧倒的多数の現実であるところの大虐殺の事実そのものを映画には出来ないのだろうか。現実としてはひたすら無慈悲に大多数の人達が殺されたのにも関わらず、その事実だけでは物語にならないということなのだろうか。確かに誰かが生き残らなければ、物語が語り伝えられることもないが、であるならば生き残った者が物語を語る時には、死んでいった者達の存在を出来るだけ想像の範疇に招来するような物語をすべきではないのか。

この映画だけを見た場合、観客はどれだけ虐殺の逃げ場のない絶望的な事実を、事実として受けとめることが出来るだろう。映画をなるべく万人受けするものにする為には、観客が感情移入する主人公が生き残れるのでなければ不味いということなのかもしれないが、主人公が生き残るその事例は、全体から見れば飽くまで例外の事例なのだ。その点で『ルワンダの涙』はより誠実ではあった。あの映画でも結局は生き残った者が事実を語るという物語の普遍的な形式を逸脱するものではないが、絶望的に圧倒的だった逃げ場のない死の現実、その状況が、そこには焼きつけられていたように思う。

100万人に対する1200人。物語は、歴史は生き残ったものが語るものだとは言え、虐殺という事実が指し示すのは、圧倒的多数の死の現実であるはずなのだ。物語や、歴史というものが生き残った者の視点でしか語られえず、死んでいった者の視点では語られないということは、仕方がないことであろうとは言え、やはり不条理そのものであるように思えてならない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。