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[コメント] ミュンヘン(2005/米)

実力相応の仕事をしていない、と苛立たせる監督だった。いまは予想を超えた、しかし彼にしか創れないと思わせる作品を繰りだしてくる。… まさに<巨匠>の領域に入ってきたスピルバーグ
死ぬまでシネマ

1970年3月、よど号ハイジャック事件。1972 年2月、浅間山荘事件。1974年8月〜、連続企業爆破事件…。今では信じられない事だが、緊迫した世界情勢の煽りを受け、日本でもテロリズムの嵐が吹き荒れていた。日本では現在はトンデモな勘違いと総括されている、幼稚な理論による暴発であった。連合赤軍や反日武装戦線のメンバーはやがて中東へ闘いの場を移していったが…。

映画を観て思ったのは、当時の時代の空気、そして、現在も存在するパレスチナ(中東)問題。「殺人者に平和賞を贈るのか」と非難されたアラファトは既に去り、シャロンは危篤の床につき、ファタハはハマスに惨敗している。…

日本人が防諜戦・暗殺戦を繰り広げるとしたら相手はどこだ? 北朝鮮か? 中国か? 「愛国者」は言う。「国を守れ、もっと奴らの脅威を恐れろ」… ぼくは、アジアのひとびとと殺し合いをしたくない。民族の血の、国土の奪い合いをしたくない。愛国者は言う。「国を愛せ、何だ今の腑抜けた日本は、国家と言えるのか」… ぼくは、いま日本は平和なのだと思う。もう人殺しの政府は持ちたくない。

スピルバーグは観客の前に提示する。新たな血をつくらず、埋もれていこうとする過去の悲惨・凄惨・無惨に光を当てる。圧倒的な時代考証により再現されたテロリズム。『シンドラーのリスト』・『プライベートライアン』からの流れが、本物の太い奔流となる。彼は、いま彼にしか出来ない事を真摯に果たそうとしている、恐るべき巨匠になりつつある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Keita[*] 甘崎庵[*]

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