[コメント] ミュンヘン(2005/米)
テーマは重いが、さすがに映画作りがうまいスピルバーグだけあって、そんじょそこらのスパイ・サスペンスをはるかに凌駕する、緊張感みなぎる迫真の出来。特にカメラワークが抜群に良く、光と陰の使い方も非常に印象的というか、映画の内容とうまくかみあい、このカメラワークがあってこそのテーマの扱いという感じがする。
光のあたる場所、表舞台と、決して表に出ない裏の世界、陰の部分。
表にいるものは裏の世界を必要とし、裏にいるものは表の大義を求める。ところが実はこの表と裏は切り離された別物ではなく、同じものであり、ただ光があたっている部分とそうでない部分があるに過ぎない。このことを、巧みなカメラワークとシーンづくりで演出して見せたスピルバーグの手腕には脱帽である。
いくらエリック・バナが「存在しない」「知らない」と言われてみても、確かにそこに存在し、知られている、この事実は消えないのである。そこをあえて無視せざるえないからこそ、テロと復讐の連鎖はどこまでいっても虚しさしかない、のではないか。
仕事を終えてもかつての殺伐とした世界の感覚が抜け切れないという、ありふれた苦悩をここまでうまく見せ、かつ説得力をもって語れるというのは、やはりたいしたものだ。
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