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[コメント] クラッシュ(2005/米=独)

ディレクター。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







たまたま先に観てしまったポール・ハギス監督の第2作、『告発のとき』と同様に、この演出を見ていると、彼が「地味だが的確に映画を語れる」資質の持ち主であることと、脚本家としての彼の秀逸さもそういった資質に基づいた才能が発揮されたものであることを再確認することができる。

本作の脚本が本当によく練られているものであることは、誰が観ても納得することだと思う。がしかし、こういう脚本は、であるが故に行き過ぎた演出を施してしまうと何とも嫌味な映画になってしまう要素をも秘めているものだ。けれどこの映画がそうならぬどころか、脚本の良さを120%生かし切った傑作に仕上がっているのは、「映画監督」としての彼の演出力がそうさせているからに他ならない。それほど彼のディレクターとしての才は頭抜けている。

例えば幼い「妖精」が、今にも撃たれようとする父を助けんがため、その胸に飛び込んでいく際のあの衝撃と感動は、今にも瞼に焼きついて離れない。そう、本当に瞼に焼きついて離れないのだ。そういった短くとも力強い画の連動を、過ぎることなくフィルムに収めることができることは本当にすごいことだと思う。

最初は脚本の素晴らしさのみに惹かれて出演を決めた役者陣も、出来上がった本作を観てその処女作とは思えぬ演出力に驚愕の思いと、自らの力をそれ以上のものとして画に表わしてくれたことに対する感激の思いとでいっぱいになったことだろう。

まったくもって、ディレクターとしての仕事の極北。素晴らしい作品。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)jollyjoker けにろん[*]

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