[コメント] デルス・ウザーラ(1975/露)
みろ。みんなみろ。
いきなりの押しつけですみません。でもそういう気分にさせる映画。自分は,実は黒澤明の映画はこれ以外に見たことはない(すまぬすまぬすまぬ)ので,この映画の絵が黒澤の絵づくりとして成功しているのかどうかはわからない。実際,「この映画は黒澤得意のアップカットがないということで意外に評価されていないようだ」という情報も見かけた。でも自分はそういうところは気にならなかった。なにせこれが初めての黒澤映画なもんで。かえって引いた絵づくり,物語の淡々とした進行が心地よかった。
感動したのは,デルスの生き方だ。いや,生き方というと何か人生訓のようなうさんくさいものを連想させるのでよくないかもしれない。自分がここで言いたい生き方とは,まさに日々の生活を作り上げていく方法だ。たとえば,シベリアの自然になれていないアルセーニエフと,そこで生き,暮らしているデルスが一緒に探検をし,道に迷ってしまう。日が暮れていく。アルセーニエフ一人なら間違いなく凍死してしまう状況。そんなときに,デルスは危機を切り抜ける確かな方法を持っている。そしてそれを黙々と実行していく。淡々と実行していく。デルスにとっては,凍死してしまうかもしれない危機的な状況も,日々の生活の一部として組み込まれている。それを切り抜けるということも日常的な行為として何気なく存在している。
自分が生きていくためになにをすればいいのかを机上の空論ではなく身体技法として身につけているデルス。そんなデルスをみて感動した。
黒澤フリークの人も,黒澤嫌いの人も,そもそも映画を観ない人も,この映画だけは観てほしいと思う。
・・・これって「映画」の「批評」じゃないのかも。出直します。
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