[コメント] 太陽(2005/露=伊=仏=スイス)
この映画を銀座シネパトスで上映するという興行サイドのセンス。その絶妙さに感嘆しました。
ソクーロフによると、今回の『太陽』は、昭和天皇を主人公とする御伽噺のようなものらしい。その意味で、現実感を減退させる効果を持つくすんだ色彩はピッタリです。しかし、そうした色彩をどのように出すのかは微妙なセンスがいる。撮る人によっては、くすんだ色彩(matte colors)を出しているように見えて、単なる落ち着いた色彩(muted colors)になる場合が多いわけですから。そのあたりの色のセンスに、ソクーロフの魅力があるのではないでしょうか。
しかし、今回の映画を銀座シネパトスで上映するという興行サイドのセンスも絶妙です。この『太陽』の中で、昭和天皇は、米軍の空襲から身を守るために、地下防空壕で生活しています。そして、銀座シネパトスは、その立地上、常に地下鉄の音が映画館の中に入り込んでくる。そのウザい地下鉄の音が、地下壕で生活する昭和天皇の姿と、見事にマッチしているのです。ソクーロフは、天皇周辺の様々なノイズを効果的に挿入していますが、その映画内のノイズと映画外のノイズが、これほど上手い具合にミックスされたケースは珍しい。久々に「映画館で観るべき映画」を観た感じです。
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