[コメント] 大地と自由(1995/英=独=スペイン)
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スペイン戦争を総括した不滅のルポルタージュ(帯にそう書いてある)、ジョージ・オーウェルの「カタロニア賛歌」を模したと思われ、(やや、というか、とっても説明不足ではあるが)スペイン戦争の核心に迫る、ケン・ローチ監督の渾身の一作。 でも、何で今?
世界中で何億もの人が飢えているそばで、形の悪い野菜は売れないと、捨てている。 まともな社会保険があれば、医者にかかれて、精のつくものを食べられる病人が一体どれだけいるかというとき、一人の人間の手術に何千万という税金をつぎ込んでいる。 このゆがみきった世界と、たった60年前、自分自身の解放をかけて労働者が団結した輝かしい闘いとの対比を、監督はまざまざと突きつけるかのようだ。
同書の中で、オーウェルがこんなふうにいう。 「彼ら(労働者)は、いつかは勝つだろうが、せめて100年以内にはそうなって欲しい...。」 スペイン戦争から勘定すれば、あと40年以内にはそうなって欲しい、と。
彼は、「1936年から歴史は止まったままだ」ともいったけど、労働者が何もしないで過ごしてきたわけじゃない。 非暴力でも、全く武器のないままでも絶対に勝てないことも知ってる。 じゃあ、武器をどうするか。それもすでに知っている。 そして最終的には正義が勝つ。
デイビッド(イアン・ハート)も、オーウェルも、その瞬間をまだ見ないまま死んだが、そのときが迫りつつあるとケン・ローチは確信しているのだと思う。この作品は、そんな無名の命たちの志を継いで前進する無名の者たちへのエールだ。
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