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[コメント] 硫黄島からの手紙(2006/米)

一般人から観た硫黄島。100/100
たろ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







他の戦争映画とは違うのは、西郷という日本兵の存在だ。彼は天皇にも戦争にも興味がない。国ではなく妻と子を想い、名誉の戦死より生きて帰る事だけを願っている。彼を日本兵ではなく、一般人として描く事で感情移入しやすくしているのがイーストウッドの業だ。

父親たちの星条旗』では国のために戦いながら、その国に利用される「戦場から離れた男達の地獄」を描いたが、本作では「戦場にいる人間」を描いた。「戦場にいる日本兵」ではなく、「戦場にいる人間」である。日本兵と言ってしまえば一括りだが、中には戦争に反対しながらも徴兵されて嫌々駆り出された者もいるはずである。それがどれくらいの割合でいたかは定かでは無いが確実にいるだろう、それを描いた点では他の戦争映画と差別化出来るのではなかろうか。

他にも栗林が「やがて諸君の魂に感謝し涙する日が来るであろう」と言っていたように、硫黄島の戦いという史実を広めた意味でも存在意義の大きな映画だ。映画という媒体を最大限に利用したイーストウッドの偉業に感服する他ない。

第二次世界大戦での日本軍死者は200万人を超え、硫黄島での死者はその1/100にも満たない。しかしそこには確実に2万近い人間の人生があり、そこで絶たれたと知れば日本人として涙せざるを得ないだろう。そして、硫黄島ですら全体の犠牲者数の数分の一しかないと考えれば、いかに世界大戦の規模が大きかったが分かる。二度と起きてはならない事と、私たちが認識せねばならない。それを外国人、しかも敵対していたアメリカ人から思い知らされるなんて…イーストウッド様様である。

(評価:★5)

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