[コメント] アリスの恋(1974/米)
アリスが口ずさむ歌は甘美でやるせない。だが、それがアリス自身の閉じこもる城壁になっている。その中の彼女は少女のままだ。
アリスは自分が歌手でやっていけると信じている。アリスは自分が貞淑な母であらねばならないと念じている。それが彼女の周りに壁をつくる。その外にはいとも簡単に手にできる幸福がぶら下がっているのに。下品な口を叩くウェイトレス、言うことをきかない子供はひっぱたく男。ごく普通にどこにでもいる連中が、アリスのガラスの神経には耐えられない。
この映画のなかでアリスの車は走れるだけの距離を走ったが、彼女が踏み出したのは一歩だけだ。彼女が幸福であり続けられることなど思い煩うまでもないこと、そしてその幸福はあらかじめ予定されたものとは限らないことを知るための小さな一歩だ。
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