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[コメント] アポロ13(1995/米)

そんじょそこらのSF映画を超えた、SFのような現実。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この物語は実話だというのは周知の事実だろうし、あれだけの大事故に見舞われながらも全員無事に帰還出来たというのは奇跡のようでもある。だがこの一大スペクタクルは、NASAの職員およびアポロの乗組員が、最悪の事態を防ぐべく全力を挙げたゆえの結果であり、最後まで諦めずに努力して勝ち得たものであることは間違いない。だとすれば、なおさらこの映画は「プロジェクトX」に近いのだが……

 だが、どうもそれだけでは物足りない。鑑賞中、もっと別の魅力を感じてしょうがなかったのだが、事故発生後の処置を観ていてフト気が付いた。これはSF映画だ、と。

 確かにこれは「実際にあった話」だが、「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもので、こんな話が本当にあったという意外性もその一因である。しかしそれだけがSFなのではなく、アポロをどうにかして地球へ帰還させようとする人々の姿に、どこか過去のSF映画のようなものを感じたのだ。  自分は、昨今のSF映画の「科学性の無さ」を憂いている。科学的空想はいくらでも出来ているが、そこに技術的なものを感じられない、すなわち、地に足が着いてないような科学が氾濫しており、現在ではそれが主流になっている。ガッチガチの科学映画なんて観てて面白くないだって? じゃあ聴くが、例えば全く派手さが無いのに『アンドロメダ…』はなぜあんなに面白いんだ? 『ミクロの決死圏』『地球爆破作戦』『ウエスト・ワールド』も、一見突飛なようできちんと足が地に付いているではないか!  地球への突入経路へ向かうために必死に宇宙船を操作するクルー達、電池のパワーを気にしながらその手順を研究し、上手くいくと分かって会心の笑顔を見せるNASA職員。一番科学的というか技術的な根拠に基づき、綿密な計算と手順を踏んだ上で地球無事帰還への道を辿るという過程に、どこか一昔前のSFテイストを感じずにはいられなかった。

 しかし本作はSFテイストでありながらも、足が地に付くどころか本当にあった話であり、自分にはむしろそっちの方、SF映画のようなことが起きてしまったことが信じられない。科学性の無い、そんじょそこらのSF(と称する)映画なんか完全に凌駕している、とすら思っている。現実の話に負けている空想って一体……。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)terracotta[*] uyo[*]

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