松田龍平からはその面相、hitomiからはそのシルエットが欲しかったんだろう。加えて脇役のサラリーマン刑事とイケメン後輩刑事というのも随分絵的なキャラだし、血まみれ連続殺傷事件、ケータイコミュニティ、幼児期のトラウマ、深層心理へのダイビングという鉄板ネタに、「眠ったら死ぬ！」っていうのも、もうティーン定番のオカルトルール。てっきりホラーコミックが原作なんだと思った。

塚本ワールドのおどろおどろしさを、もっともキャッチーに受けとめてくれそうなところ、というのでホラーコミック風なスタイルを選んだのではないだろうか。だとしたら、確かにちょっと台詞はきびしかったけどhitomiのキャスティングはかっこよくて良かった。問題はむしろ彼女がどっちかというとざっかけない、素の部分をおおらかに開放してそうなイメージが強いものだから、抑圧されたキャラを隠しているように見えないことかな。こそこそ隠れている私のほうがたやすく想像されて、キャリアの警察官という「バリアを張っている私」という設定が脆弱になってしまっている。ヴィジュアルはマンガであっても、ここはうそ臭さを感じさせてはいけないところだろ思う。

最後に一言。包丁を構えてシャーっとやっているのが塚本晋也だって分かってる分には、やっぱり監督自分でやっちゃうんだあ、と苦笑混じりに微笑ましく観れるのだが、塚本晋也を知らない人は、なんでこのサイコキラー役がそのへんの中年オヤジなんだろう？と思うんでないだろうか。本作に限っては監督だけがコミックワールドからはみ出てる気がする。