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[コメント] 幸せのちから(2006/米)

「親子」ではなく「家族」の愛を描いて欲しかった。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これは父と子の親子愛を描いている物語でしたが、母親(妻)の存在が全く無視されているところがとても気になりました。

リンダが家を出て行った後、息子がふと母親を思い「僕のせいでお母さんは出ていったの?」と父親に聞いた時、彼は「お前のせいじゃない。母さん自身の都合で出て行ったんだ」と言いました。確かに夫婦の仲というものは所詮他人ですから、一度歯車が狂いだしたら修正は難しいのかも知れないとは思います。しかも金銭が絡んでいる場合はなおの事。誰が悪い訳でもないし、誰のせいでもなく、ただ「貧しさ」に勝てなかっただけだと言う事も良く分かります。でもあの場面では「お父さんのせいだ」と言って欲しかった。

リンダが家を出て行ってから機械は数台売れました。けれども一緒に暮らしていた時には一台も売るシーンがありませんでした。リンダは1日16時間(だったと思います)働いていると言っていました。共に暮らしていた時のクリスに果たして危機感というものはあったのでしょうか?確かに多少の危機感はあったと思います。でも友達に貸した14ドルを鬼のような形相で「返せ!」と迫ったのもリンダが出て行った後。なぜそこまでの危機感を「家族」がいる時に持てなかったのか。私には彼があまりにも楽天的に映り、とても苛つきました。

また、息子が父親に対して「最高のパパだ」というニュアンスの台詞がありました。幼い子供にとっては最高のパパかも知れないけど、一人の夫として、一家の大黒柱としての彼は果たしてどうなのでしょうか?男も女も家庭を築き家族が増えると人としての役割が複数出てきます。「男」として「夫」として「父親」として「大黒柱」として。「女」として「妻」として「母親」として。家庭を築くという事はどの役割もキチっと果たす。それが最も善い形であると思います。その役割が出来ないと家庭は崩壊してしまうのではないでしょうか。

とは言え、私は未婚者で子供もまだいませんからこんな風に理想的な事を言っているのかも知れません。現実はこんなものではないのかも知れません。クリスとリンダのような感情がいつか自分にも芽生える日が来るかも知れないと思うと、やっぱり少し恐ろしいです。

ラストについてですが。20人の中からたった1人が残る。その1人になるというのがどれほど難しい事なのか、私にでもよく分かります。そんな偉業をあんな貧しさの中から成し遂げたクリスは確かに素晴らしいと思います。でもあの後リンダを再び呼び寄せたのか、そこがとても気になりました。呼び寄せていたとしてもラストにそんなシーンが挿入されていればものすごく嘘くさいというか、どん引き確実なので、あそこで映画が終わったのはまぁアリかも知れませんが、個人的にはとても気になるところです。(リンダを再び呼び寄せる為に、また楽しい家庭を築く為に頑張っているというクリスを描いてくれさえいれば、ラストにこんなシーンが挿入されてもどん引きにはならない筈なんですけどね…)

それから最後、クリスが採用を告げられた時のあの表情はとても良かった。うわっと涙が溢れる訳ではなく、今までの苦労を噛み締めるように口をぎゅっと結び、目を真っ赤にするあの顔は本当に素晴らしかったと思います。

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07.01.26 記

(評価:★3)

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