[コメント] ドリームガールズ(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ブロードウェイの大ヒットミュージカルを、『シカゴ』(2002)の脚本家ビル=コンドンが監督として映画化。
このところ結構忙しく、観るべき映画を観逃し続けているのだが、その中で本作を観たのはさほど理由があった訳ではない。ただ、ネット眺めていたら、“2006年アカデミー最多ノミネート”とどこかで書いてあったから。という単純な理由だった。勿論前知識はほとんど無し。
観始めた時に思った。「ああ、こりゃ合わないわ」。物語はベタベタなものに仕上がるだろうし、それにさほど音楽に詳しくないし、ブラックミュージックに馴染みのない私にはさほど楽しめそうもない。
そう思っていた。
実際、物語そのものは全く意外性がなくそのまんま。
だけど、そのべたな物語が無茶苦茶に映える!ミュージックシーンのケレン味と言い、キャラ立ちと言い、見事なほどにはまってる。すっかり中盤からのめり込んでしまい、ラストには溜息。しんみりとさせるべき所はさせ、盛り上げるところでは怒濤の如く盛り上げる。お陰でダレ場さえなく、最後まで一気に観させていただいた。合わないはずの物語なのに最後まで魅せてくれるのは名人芸とも言える緩急の付け方の上手さ! キャラについては言うまでも無かろう。若手だとばかり思ってたフォックスはすっかり演技派男優として完成の粋にあるし(オスカーを得た『Ray/レイ』(2004)に続いて美声も披露してくれている)、最近ヒット作に恵まれてないマーフィも、新たな魅力を本作で掴めたんじゃないのかな?結構意外な役所なのだが、見事にはまっていた。物語が進むに連れ、どんどん艶っぽくなっていくビヨンセの変貌ぶりもたいしたものだし、本作がデビューとは到底思えないエフィ役のジェニファー=ハドソンもしっかりはまり役。更に脇を締めるグローヴァーも良い役をやってるし、配役については文句なし。
演出と人物描写だけでも大満足。と言った感じではあるのだが、本作で重要なのはむしろ設定面ではないかと思う。1962年から約10年の時間が本作では流れているが、その中でアフリカ系住民にとっては重要な事件がきちんと描かれていて(具体的には1963年。キング牧師のワシントン行進や1967年のアフリカ系住民によるデトロイト暴動など)、それらの事件が自分たちの活動に影響を与えていることを示唆しているし、かつてブラックミュージックとされ、極めて限られた地域でのみ押し込まれていた音楽が世界に向けて発信され、更にそれが新しい音楽を作り出していくまでがしっかりと描かれているのも良い。ちゃんと音楽の違いも聴かせてくれる(ただ、ラスト付近の音楽は80年代以降のものに聴こえるけど)。
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