[コメント] ロビンソン漂流記(1952/米=メキシコ)
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一言でいえば、アドベンチャーとしての面白さと文学的側面のバランスが良い。文明から切り離された苛酷な孤独の中で見つめる、「個」と理性や常識、信仰などとの関係や意味。そのようなテーマが真に迫る傍らで、視覚的な興味もワクワクするような活劇もふんだんに盛り込まれ、さらには、ブニュエルテイストも見え隠れする。その無理のないバランスは、そのどれもが当たり前のものとして監督の中に備わっているからなのだろうな、と思ったり。
部族の儀式を観察する、望遠鏡越の視線などもさることながら、やっぱり悪夢のシーン。外面的にはさほど突拍子もないことをやってはいないだけに、より生粋のシュールレアリストとしてのブニュエルが端的に表れている気がした。悪夢が現実の人間に媚びて受け応えることもなく、逆に現実の人間が悪夢に話を合わせられているように見えるのが、何ともシュール。
そして、あのシチュエーションで不条理ではなくあくまでシュールなのは、悪夢を観る側が、現実と悪夢の間に境界を置くか置かないかの違いなのでは、なんて個人的には思う。居心地の良い不条理が存在しないということは、完全に居心地の悪いシュールというのも存在しないのでは、なんて。
ともあれ(そんなことはどうでもいいのですが)、得たいものが得られない「渇き」は、後の『皆殺し〜』や『ブルジョワジー〜』への萌芽とも見えるし、そもそもこの話自体が出口の見えない日々の「繰り返し」の話じゃないか、とも思ったり。まあ、そんなフトコロを持ち合わせながらも、万人受けするエンターテイメントとしてもオススメです。
(20007/6/6)
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