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[コメント] スパイダーマン3(2007/米)

“ベスト”ではないかもしれないが、間違いなく、シリーズの“集大成”。掲げられた「赦し」というテーマのもと、クライマックスではもはや行くところまで行ったと感じさせてくれた。(2007.05.06.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ふと、1作目『スパイダーマン』について書いた自分のレビューを読み返したのだが、随分と映画を見る視点が変化したのだな、と我ながら実感した。

1作目を観た頃は「あのコスチュームはいつの間に作ったんだよ!?」といったような細かい部分を妙に楽しむようなB級要素に魅力を感じていたのだが、今回3作目ではテーマ性を娯楽作の枠組で突き詰めていたことのような、真面目な要素に魅力を感じているのだから。

 ただ、確かに、1作目にあったようなスプラッター映画を撮っていた頃のサム・ライミ的なB級要素というのは、シリーズが進むに連れて薄まっている。

1作目がもっとも伸び伸びしていた。ウィレム・デフォーが演じていたグリーン・ゴブリンは、デフォーが演じたというのも大きいが、“いろいろな意味”でインパクトの強い敵役だった。仮面の下から“口”が見えている人間臭さもあったり。

それでいて、ストーリーとしてはヒーローとしての覚醒を描き、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という名台詞も残すなど、物語としての骨格も今考えるとしっかりしていた。客観的に見て、結局のところ1作目がシリーズの中ではベストなのだろう。

 しかし、それでもこの3作目。僕はこれこそシリーズの集大成だと思う。1作目でほぼすべてやり尽くしたあとに、2作目、3作目と作っていくと、追っていくのはやはりキャラクターのより深い心理と、それに伴うテーマ性ということになる。3作目は、そのテーマ性を、娯楽作としてアクションなどで楽しませながら、突き詰めていった。

 叔父の死がトラウマになったり、ヒーローとしていかに生きるかに苦悩したり、それと並行してMJとの恋愛に悩んだり…。2作通して描いてきたピーターの心が、しっかり生きているから、3作目でその描写を高めていくことができた。ハリーにしても同様。特に、ハリーのエピソードは3作目でついに実を結ぶ。

シリーズ通して培ってきたもの。それを全キャラクター共通かつ、時代性も感じさせる「赦し」というテーマに繋げていき、物語としても山場を迎えるところで、最大の盛り上がりを見せる「スパイダーマン&ニュー・ゴブリン VS ヴェノム&サンドマン」の戦いを見せてくれるのだ。そこにカタルシスを感じないわけがない。

 『スパイダーマン3』は前2作なしでは成り立たない。単体の映画としては「堅苦しくなりすぎ」「詰め込みすぎ」といった感も確かにあるだろう。ただ、シリーズとしてはやはり集大成。同時に、もしかしたらこのシリーズの限界がここなのかもしれない。

トビー・マグワイアキルスティン・ダンストジェームズ・フランコが演じ、サム・ライミが描いてきた“キャラクターたちの旅”は、ひとまずここが終着点である気がする。次回作があるならば、ガラッとテーマを変えて、ライトな映画に作り変えてほしい…。

(評価:★4)

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