[コメント] スパイダーマン3(2007/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ふと、1作目『スパイダーマン』について書いた自分のレビューを読み返したのだが、随分と映画を見る視点が変化したのだな、と我ながら実感した。
1作目を観た頃は「あのコスチュームはいつの間に作ったんだよ!?」といったような細かい部分を妙に楽しむようなB級要素に魅力を感じていたのだが、今回3作目ではテーマ性を娯楽作の枠組で突き詰めていたことのような、真面目な要素に魅力を感じているのだから。
ただ、確かに、1作目にあったようなスプラッター映画を撮っていた頃のサム・ライミ的なB級要素というのは、シリーズが進むに連れて薄まっている。
1作目がもっとも伸び伸びしていた。ウィレム・デフォーが演じていたグリーン・ゴブリンは、デフォーが演じたというのも大きいが、“いろいろな意味”でインパクトの強い敵役だった。仮面の下から“口”が見えている人間臭さもあったり。
それでいて、ストーリーとしてはヒーローとしての覚醒を描き、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という名台詞も残すなど、物語としての骨格も今考えるとしっかりしていた。客観的に見て、結局のところ1作目がシリーズの中ではベストなのだろう。
しかし、それでもこの3作目。僕はこれこそシリーズの集大成だと思う。1作目でほぼすべてやり尽くしたあとに、2作目、3作目と作っていくと、追っていくのはやはりキャラクターのより深い心理と、それに伴うテーマ性ということになる。3作目は、そのテーマ性を、娯楽作としてアクションなどで楽しませながら、突き詰めていった。
叔父の死がトラウマになったり、ヒーローとしていかに生きるかに苦悩したり、それと並行してMJとの恋愛に悩んだり…。2作通して描いてきたピーターの心が、しっかり生きているから、3作目でその描写を高めていくことができた。ハリーにしても同様。特に、ハリーのエピソードは3作目でついに実を結ぶ。
シリーズ通して培ってきたもの。それを全キャラクター共通かつ、時代性も感じさせる「赦し」というテーマに繋げていき、物語としても山場を迎えるところで、最大の盛り上がりを見せる「スパイダーマン&ニュー・ゴブリン VS ヴェノム&サンドマン」の戦いを見せてくれるのだ。そこにカタルシスを感じないわけがない。
『スパイダーマン3』は前2作なしでは成り立たない。単体の映画としては「堅苦しくなりすぎ」「詰め込みすぎ」といった感も確かにあるだろう。ただ、シリーズとしてはやはり集大成。同時に、もしかしたらこのシリーズの限界がここなのかもしれない。
トビー・マグワイアやキルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコが演じ、サム・ライミが描いてきた“キャラクターたちの旅”は、ひとまずここが終着点である気がする。次回作があるならば、ガラッとテーマを変えて、ライトな映画に作り変えてほしい…。
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