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[コメント] 俺は、君のためにこそ死ににいく(2007/日)

伊武雅刀がパイナップル付きのトロピカルドリンクを前に演説してたの観て気持ちが萎えました。こんな演出が続きますからねえ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 何というか、タイトルの過激さと較べると、内容はとても素直な作品で、真面目に太平洋戦争を扱った作品に仕上げられていた。はっきり言ってもっとツッコミ所が多いだろうと思っていただけに(そりゃ結構あるけど)結構拍子抜け。

 実際設定そのものは決して悪くない。

 かつて日本映画における太平洋戦争は日本軍、事に上層部をを悪そのものに描いており、名もない兵士達が日本を恨みに思いつつ死んでいったという描写に凝り固まっていた。こういう描写はとかく作り手が偽善的になりやすいために見ていて気持ち悪いし、兵士の目から見た戦場だけを大切にするため、大局が全然分からないと言う問題があり。

 最近はその傾向も変わってきたのか、大局的な視点に立ちつつ、歴史の渦中にある個人を描こうという姿勢が見られるようになって何より。反戦を訴える場合はむしろこうやって冷静に観るべき。少なくとも本作もその立場に立って作られているようではあるし、下手な戦争美化がされてないのも好感が持てる(そう思われるシーンもあるにはあったが、ほとんど冗談の類と切り捨てて良いものばかり)。むしろ戦争映画ならば、本作のように作るべきなのだ。

 しかしながら、だからといって本作が面白いか?と言われると逆。

 本作は鳥濱トメさんの証言を元に物語が構成されているのだが、実はこれは既に『ホタル』(2001)でなされており、同じ人物も登場している。金山という青年がアリランを歌うところや、死んだら蛍になって戻ってくる話なんかは全く同じエピソードがあったが、途中でそれに気付くと、あまりな出来の差に驚かされる羽目になる。『ホタル』の方は一貫した物語性に貫かれているのに対し、本作の場合、それらの特攻隊員の話はちょっとした味付け程度。仮に差異化を計ったとしても、あっさりし過ぎてる。それぞれのキャラの美化も中途半端。特攻隊員をより多く描こうとしたために、逆に個々のエピソードが印象に残らなくなってしまった。こう言うのだったら、一人一人のエピソードを語りで描いた方が良かったのではないかな?(そうすると映画にする意味がないか)。

 そして本作で最も駄目なのがカメラワークの酷さだろう。重要なエピソードのほとんどが固定カメラ、しかも狭いセットで撮られているため、奥行きが全然感じられないのみならず、余計なアイテムや人を配置しすぎて中心がぼけて仕方ない。例えばオープニングの「特攻の父」と呼ばれた大西瀧治郎のエピソードがあるが、あれだけ緊張感をはらんだシーンに民族衣装に包んだお姉ちゃんは出てくるわ、トロピカルドリンク(しかもパイナップル付きのグラス)を前に熱弁を振るってるわ、なんだか言ってることよりもそっちばかりに目がいってしまうし、富屋食堂には余計な人が必ず飯食ってて、「なんでこんな人がいるんだろう?」と違和感を感じまくり。特攻訓辞のシーンでは後ろで特攻機を整備してる整備員達が動き回り、やっぱりそちらの方にばかり意識が行ってしまう。それらもあるが、全般的に画面が平板で、まるでテレビドラマを観ている気にさせてしまう。カメラワークもあるのはあるのだが、あんまりメインエピソードとは違ったところで使われているばかりなので勿体ない。目が変なところにばかりいってしまうのは、映画としては致命的なのではなかろうか?

 お陰でなんか改めて『ホタル』観たくなってきたよ。

(評価:★2)

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