[コメント] パラダイス・ナウ(2005/仏=独=オランダ=パレスチナ)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
パラダイスは殉教して後の来世、ナウは被抑圧者として生きる現世を意味してる。どっちを選ぶか。。。
本作は、自爆攻撃を間近にした若者の心の葛藤や家族への思い、友情などをテーマに描いたヒューマンドラマだけど、政治的なメッセージもすごく強い。決して許されることのない暴力による復讐を扱っている割に、監督の目はあくまで中立で、どちらかの立場に肩入れすることなく描き続けている。
僕たちは、まずはこういったことが今日も明日も起きているという真実を知っておかなくちゃいけないんだと思った。
どうしてこんな凄惨なことを、日本という国にいると誰も教えてくれないんだろう。 学校や新聞やニュースなんかより、映画の方が余程僕に知識を与えてくれる。興味の範囲を拡げてくれる。気になれば調べればいいだけのこと。その興味すら、与えてくれない国に失望する。
パレスチナ暫定自治政府領と聞いて、その場所さえわからない人はきっと彼らの背景も知らない。なのに、彼らの行動を軽々しく『自爆テロ』だと言い放つのはやめてくれ。それだけで、イスラエル寄りの発言をしていることになるんだぜ。彼らは自分たちの行為を「テロ」だなんて思っちゃいないんだ。
ただ、この行為が正しいのかどうか、悩んでいる青年もいる。そんな若者のお話。
正しいとか、正しくないとか、僕らは簡単に言えない。 宗教絡みの話となると「関係ない」みたいな立場を取る人は多いけど、僕たちの無関心が彼らを自爆行為に追いやっているのかもしれない、と思わされた。
監督は言う。「物事を簡単に邪悪と神聖とに分けるのはナンセンスだ。私は複雑きわまりない現状に対する人間の反応を描いているのです。」
パレスチナ人の監督でさえ殉教と称する暴力に批判的とも取れる立場「も」保ち続けることに極力努め、事の正当化ではなく説明をしている。
幼馴染みの2人の行動は、ラスト相反する。2つの価値観を示すことが精一杯だったことの表れだろう。それだけに、物語は僕の喉に、腹に、心臓に、脳髄に食い込んでくる。
政治的に逆効果な犯罪的行為を前にしてさえ、心を動かされずにはいられない。
「自爆テロ」とニュース原稿を当たり前に読んでるそこのアンカー、あんただよ! つべこべ言わずにコレ観ろっ!
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。