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[コメント] 遠くの空に消えた(2007/日)

行定勲の決意を感じる秀作。馬酔村から漂う浮遊感に浸りながら、「何かを信じてみよう」と素直に思えたのだ。爽やかさ、優しさがある。(2007.08.18.)
Keita

**ネタバレ注意**
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行定勲岩井俊二の門下生ということもあり、オリジナルを撮らせると岩井作品の雰囲気に似るものですね。岩井作品の常連・伊藤歩が出演しているから、さらにまた。

行定勲は、『春の雪』という数ある原作ものの中でもかなり難易度の高い三島由紀夫の純文学を前作として手がけた。しかも、メジャー映画の枠組みの中で。これは出来不出来に関わらずかなりの挑戦。そのあとに撮る作品として、オリジナルに立ち返って、この『遠くの空に消えた』を撮ったことはすごく良かったと思う。

馬酔村という空港建設によって存続の危機に立たされた村。これが、どこにある村のなのか。それは、すごく不透明に描かれる。どこか、浮遊しているような村。もしかしたら、こんな村、ないんじゃないかとすらも思えてしまうくらい現実から離れている村…。

それが、この映画の良さに思える。現実ではない感じ。だからこそ、奇跡も信じられる土壌に観客も行けるのかもしれない。徹底的にファンタジーなのだ。ある意味では、岩井俊二の『スワロウテイル』と似た印象とも言えるかもしれない。

僕はこの映画を観て、もう少し何かを信じてみようかなと思えた。何か裏があるのではないか、建て前ばかりではないか、どうしても穿った見方をして、あまり人を信じていない自分に気づかされた。(なんだか書いていて照れくさいが…。)

原作ものを撮り続けてきた監督が自分を見つめなおして作ったオリジナル作品。規模は小さくなった。大傑作にもなり得ない。けれど、「信じればできる」「奇跡を起そうぜ」といった童心を素直に見つめてみたいと感じさせてくれる爽やかさ、優しさがこの映画にはあった。

Coccoによる主題歌「甘い香り」が暖かく響き続けます。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)JKF[*] 水那岐[*]

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