[コメント] ミリキタニの猫(2006/米)
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そして、彼にとって失われた60年を取り戻すまでの物語。
注目すべきは、彼がアメリカ人としてのアイデンティティを取り戻したのは彼自身の努力ではなく、リンダ・ハッテンドーフ監督の働きが大きいという点である。
ジミー老人のアクの強さに隠れてはいるが、アメリカ社会の一員として暮らすことを頑に拒む彼を説得し、自分と同居させるところから始めて、彼の市民権を回復し終の住処を探して、収容所時代の過去と向き合うことができるようになるまで漕ぎ着けたのはハッテンドーフ監督である。しかも、生き別れになっていた実姉との再会というおまけ付きで。
監督がすべてを動かしたのではないにしても、彼女が触媒となってひとりの老人の人生を変えたのは間違いない。これこそ、原一男のいう「アクション・ドキュメンタリー」そのものだと思う。
ジミー老人のその後については意見の分かれるところであろう。果たして彼は老人ホームで安穏とした余生を送るのがいいのか、それとも路上のグランド・マスター・アーティストとして生き続けるべきであったのか、それは誰にも分からない。
だがいずれにせよ、宙ぶらりんになっていた彼の市民権問題に決着をつけたことは、彼がアメリカに暮らす以上、為されなければならぬことである。またそれは波乱に満ちた生涯を生き、人生最後のステージにさしかかった彼にとっては当然の権利でもあると思うのだ。あとは結局、本人の問題ということだ。
ジミー老人の経歴に敬意を表すると同時に、さらなる前途に幸多からんことを願おうではないか。ミリキタニ・パワー!
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