[コメント] ミリキタニの猫(2006/米)
糾弾は始終穏やかに行なわれる。生を受けた国による、思いもかけぬ罪なくしての虜囚扱い。だが、老画家は故郷と敵国の間で揺り動かされ、今日も憎悪する国に生きている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画からは、彼の両義性が汲み取れる。国の保障を受けることを薦められたときのあからさまな嫌悪感と、己の生業である絵を評価されたときのはじけ飛ぶ嬉しさの発露。彼はアメリカとそこに住む人々に、愛情と憎悪がない交ぜになった感情を抱えているのだ。
そして画家としての誇りをかけた徴兵忌避。それゆえに、己の血が繋がる日本から逃げながらも、生来の母国であるアメリカの裏切りが彼の怒りを呼び、彼はアメリカの市民権を捨てる。
しかし、やはりアメリカ人監督の撮った映画であるゆえだろうか、ジミーは最後にはかの国を安住の地と認めたかのように締めくくられている。事実であろうから仕方ないところなのだけれど、画家は老人ホームで絵を教える仕事を請け負い、社会の末端に腰を落ち着ける。そこに作為を見い出すのは穿ち過ぎだろうか。リンダの奮闘はこのフィルムの端々から充分見い出しうるのだけれど、それはあらかじめ観客を安心させるべく用意された、お仕着せのハッピーエンドのように自分には見えてならなかったのだ。
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