[コメント] 4分間のピアニスト(2006/独)
飼いならされない野獣を手なずけようとした者は、差し出した手を食いちぎられる。最後に我々に向けられた荒々しい白眼を凝視せよ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ヒロインは愛情に恵まれずに育った。だが、それに飢えていたわけではない。そのことは義父や老婦人から差し出された「好意」へのしっぺ返しを見れば判る。
最初、ピアノコンテストにヒロインを出場させるために老婦人が骨を勝手に折った結果は、ヒロインの舞台上で弾きはじめたシューマンで報われるかと思わされる。だが、そのラストシーンにおいても彼女が彼女であったのは当然の事だった。オオカミの眼をもつ少女は、シューマンを転調させ、得意のフリージャズになだれ込んでしまう。それどころか、それで聴衆から大喝采を受けるまでに至るのだ。
ここにはナチュラルな悪童がいる。彼女は決して終始老婦人を嫌っていたわけではなかったし、ともに手を携えあいもしたのだ。だが、ある男の陰謀により絆は引き裂かれる。トゲだらけの彼女の内面は柔らかすぎた。かくて、最後の老婦人に対する礼の気持ちは、あんなカタチをとったのだ。
しかしそれはヒロインにとって、破滅へと我が身を落とし込むファクトではない。彼女はオオカミの眼のままで生きる道を選んだのだ。最後の演奏は、彼女なりの生き方を示すデモンストレーションであったのだろうから。
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