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[コメント] 歌麿・夢と知りせば(1977/日)

篠田正浩の『写楽』のほうが、金がかかった豪奢なものだとは判っている。だが、その登場人物の心模様は実相寺のほうが格段に勝っている。あれは正しく江戸の「あの時期」だ。
水那岐

「夢」というキーワードをあまりに多くの人物に口にさせることは無粋に感じるし、時折現われる歌麿とは縁もゆかりもない美人画には少々鼻白む。しかし、そうした所は野暮なトリビアリズムが引き出す感情に過ぎない。

「おんな」を描き続けるために命を削る歌麿は、岸田森の冷演(熱演、とは言えないよなあ。冷たくも青白くチロチロと燃える炎の如き演技)を得てはじめて命を吹き込まれた。まこと、遊びにすら鬼と化す人物でなければあのおんな達を描けはすまい。

「夢の浮橋」の平幹二郎も歌舞伎役者としてはどうかとは思うが、彼なりにもうひとつの美しい生きかたを演じ切った。実相寺の作品では傑作と呼ばれていいものだろう。

(評価:★5)

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