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[コメント] シルク(2007/カナダ=仏=伊=英=日)

陰と陽。
きわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







おかしな木々と雪にかこまれた、世界の果ての地味な農村・日本。咲き誇る花々と愛する妻が待つ、穏やかな暮らしの故郷・フランス。色味を排した前者のシーンと、印象派の絵画のような後者のシーン。陰と陽。でも不思議なことに、それぞれの風景の印象はまったく逆。主人公の故郷には面白味を感じられず、どこだかわからない不思議な国の日本の方が鮮やかな印象が残る。それはそのまま、主人公の心が感じた景色の見え方なのかもしれない。

キル・ビル』のルーシー・リューよろしく、不自然な白帯に白い着物や、とにかく風呂のシーンばかりの芦名星を観たときは「やっぱりか」とがっかりしたけど、『ラストサムライ』のそれと一線を画した何かは、日本を完全に夢の国として描いた点だと思う。あえてリアルに掘り下げない。たとえリアルを追求してたにしても、どのみち限界があるだろうからこの方が潔い。(しかしガイジンには「日本の女=野外で混浴」とか「かいがいしく男の背中を流す」っていうイメージしかないのか!)

キーラ・ナイトレイの美しいこと。湖水に沈む彼女のシーンは本当に綺麗でした。もうそこだけで満腹というくらい。前半・中盤はなぜこんなに影が薄いのかと不思議に思っていたけど、最後の最後でぐっと魅力と実力を爆発させた。というかむしろ最後だけが見せ場。フランス(主人公夫妻の庭)の描き方も、最後が一番印象的で美しい。「庭の朝顔がきれいに咲いたので見にお越しください」と客を誘いながら、花をすべて摘み取り、いぶかしむ客人を茶室に通したとき、床の間に生けてある一輪の朝顔を見せた千利休の話を思い出した。ジラール監督、見せ方が一番日本的。 中谷美紀が健闘。所作はガチガチに力んでてツッコミがいがあるけど、セリフが良い。英語で演技するってどんなに大変か計り知れない。しかもその話し方やら抑揚なんかがまさにこの映画の鍵でもあるし。すごい役をよくこなしたなぁ。なのにほとんど騒がれてないのが気の毒。「ラスト〜」の小雪よりよっぽどすごいことやってるのに。役所広司は、ずっとそっちで仕事してたでしょってくらいソツが無さすぎて感動がない。(08/01/23 劇場)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)TOMIMORI[*] ishou[*]

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