[コメント] 人のセックスを笑うな(2007/日)
本サイトではとても評価の高い本作ですが、下記の理由により私的には最低点をつけるに至りました。
★そのほとんどをロングショットに設定したスタイル。
★アドリブまがいの台詞群
一般にロングショットは「孤独」「喪失」などを表現するのに適した撮影方法です。それはここぞというタイミングで選択されてこそ効果を発揮するのではないでしょうか。本作では9割がロングショットというかなり意図された作品でした。
誰もいない廊下・部屋・街並み。こういった背景に登場人物たちがフレームインし小芝居の後フレームアウトする。そしてしばらく写され続ける風景。「冗長」と一言で斬って捨ててしまえばそれまでなのだが、この監督は確固たる信念を持ってあえてこれを撮ってる。小津映画へのシンパシーがそうさせているのかも知れないが、監督はこの「間」をあえて挿入することでいったい何を観客に考えさせたいのだろうか?
ロングで切り取られた構図には観客を感情移入させないという装置的な意味合いもある。当然ロングショット時には効果的な台詞はありません。本作で語られる台詞のほとんどは役者たちによるアドリブなのかとすら思われる台詞であった。人物たちのキャラを浮き彫りにするようなモノは少なく、ドラマを進行させる効果をもったポイントになるべき台詞も僅かでした。
はたしてこの監督はドラマを進行させる気はあったのでしょうか?もともと起伏の少ないドラマの映画化故、難しい部分もあったとは思いますが、この監督はロングの遠景で撮る手法で我々観客を文字通り劇場の二階席に閉じ込めた。まったく逆のアプローチとしてバストショットを多用して俳優の表情を繊細に撮り切るという映画化もあったはずでしょう。
何か自身の映画的センスを誇示し、強引に130分もの尺を撮ってしまったような不遜さがみえてしまうのです。私にはその姿は観客不在のように感じられました。ついでに言えば原作すら関係ないかのようにも思えます。
一言で言えば退屈な映画でした。苦痛すら覚える時間でした。前作『犬猫』で懲りたはずなのに・・・やはり私的にはこの監督は駄目でした。
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