コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 明日への遺言(2007/日)

感動するための映画。広げた話題からは逃亡。だが、嫌な感じはしない。
夢ギドラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ある戦争における無差別爆撃や略式裁判について、明確な解答は出しようが無い、当然ですが。当事者たちには、自分家族祖国に感傷的なほどの価値観があるだろうし、法律の解釈のこともあるし、審議の行える段階には既に、勝戦国/敗戦国という立場が付いていることもある。きっと普遍の答えは、出せないのだ。

本作は、問題の難しさを、膨大な科白で説明する。しかも、非常に分かりやすい。説明の内容は、公平で考えうる全てを提示しているように感じる。

で、だからどうなんだ、という結論(作者の考え)を聞こうとするのだが、、、知らないうちに、本作の論点はずれていく。作者が、逃げるようにずらしていく。公平な裁判のできる勝戦国アメリカ人、信念を貫く岡田中尉、史実的にも奇跡であった両者の誠実さに、なんだかわからないうちに感動してしまい、無差別爆撃と略式裁判は、、あの直ぐに行われた処刑は報復じゃないって話は、感動の踏み台にされている感がややある。

しかしながら、答えらしきもの、がもしも提示されたなら、その作品は何かしらの思想に偏ったものである、と受け取られるのだろう。また、誰かがその答えに納得して(いや気持ち良くなって)、誰かが怒り出すだけ、となるのだろう。そんなことになるよりまし。本作に於いては、感動に繋げてしまった事が、これ以外になく、だから嫌な展開ではなかった。

広げた題材に結論を付けないことで、日本人もアメリカ人も悪い気はせず、とにかくも愚かであったと感じ、誠実な人間が居たことを心に刻む。この映画がめざしていることは、難しいことはなく、歴史上の人物たちに大いに感動して、戦争について少し考えてみて欲しいなんだろうね。

それはそうと、冒頭にピカソの「ゲルニカ」が出てきた。ものすごい接写で。そういう話が始まりますって合図に見えたけど、観終わると、静止画続きます、の合図でした。法廷のシーンが大部分を占め、カメラは固定。藤田まことの口元が動いているだけ、って。やっぱ法廷のやり取りがメインの原作は、映像にすると、動かなすぎ。正直、どーなの?

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。