[コメント] 接吻 Seppun(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず、男。鍵の開いている家を探し一家殺戮を果たす。家庭の主婦を殺す。家に潜み学校帰りの女の子を殺す。さらに夕方まで滞在し仕事で疲れた夫を殺す。すべて無造作に後ろポケットに携えた金槌で無感情に殺戮する。その後、マスコミを通じ、逮捕される瞬間を放送させる。
女。社会から徹底的に無視されていると思っている女。子供時代から怨念をストックしてしまって、社会全体に仕返ししたいと思っている。その女が逮捕される瞬時の男の微笑を見てしまい、同類を見つけ得た、と初めて恋の余韻に浸る。
男は今問題の、死刑になりたいがための犯罪のようだ。何故犯罪を犯したのか、普通の人々が疑問に思うことすら分かっていないようだ。犯罪を犯したのに動揺していない自分に苛立っている。
女は男に一方的に恋愛的感情に陥り、男に会いに拘置所通いをする。その間、弁護士の男との精神的な三角関係に入っていく。
と、まあ、一応ストーリーは進んでいくのだが、最後男が変に自責の念を持ち始めたことから女は男を自分の作った世界を完成させるために拘置所で殺す。いわば、世界を呪っている孤独な女の自己完結のためには逸脱していた男を殺さないわけには行かなかったのだ。
冒頭で気になるといったのは、このような人間は結構、現代社会を暗示しているということだ。2極化した競争社会にスポイルされている或いはされそうな、また俗に協調出来ない人たちは心のどこかで誰かとつながりを求めている。女が男を同志と信じたように、自分のせいではなく虐げられていると感じている人たちも多少の意味合いが違えど多いのではないかと思う。
映画では女と男は結局相容れなかったわけであるが、一応これも恋愛と言っていいものなのであろう。弁護士との三角関係が説明不足だったような気もするが、これは仲村トオルがミスキャストなのかもしれない。もっと地味目の俳優が演じていればまた違っていたのではないか、、。だって、題名の接吻は女が弁護士にしたものであるから意味が深いはずなのであります。
2時間、でも緊密な映像で、シンプルに徹したことがこの作品に強さを出している。小池栄子と豊川悦司の演技は本当に白眉で後々印象に残った。秀作だ。
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