[コメント] 光州5・18(2007/韓国)
どんな時でもスカトロギャグとラブロマンスを忘れない、韓国通俗映画の基本ラインを踏襲する限り、この作品もまた卑小なスケールの作品内に圧縮されてしまう。大局は見えないままだ。
自慰的お涙頂戴トラジディに過ぎないこの作品は、日本で言えば『零戦燃ゆ』や『連合艦隊』と同じ立ち位置だろうか。話が一家族に収束してゆくに従って、物語の根幹は見えなくなってゆき、糾弾すべき政権の非道はぼやけてゆく。
それだけではない。ただ「軍隊をからかっただけの甘ったるい集団に対し、兵士達は実弾を持って応酬した」という、なんとも情けない話に物語はスケールダウンしてしまう。これではただのメロドラマ(ギャグコーティング風味)である。折角誰も書かなかった「光州事件」の全貌を描くと謳ったこの作品が、ただの如何なる内乱にも共通する惨劇、というありきたりの価値しか得られない結果となるのに、スタッフは満足できたのだろうか。自国の秘史をあえて描く崇高な魂も、ここでは音を立てて瓦解して行くのが良く感知できる結果に終わっているのだ。
意気込みだけに3点。だが、『クローバーフィールド』の冒頭数十分に限りない退屈を覚えたコメテさんならば、間違いなく爆睡していたであろう日常シーンのつまらなさにマイナス1点。
東アジアに、ストイックな戦争秘史の映画の作り手が現われることを強く願うものである。
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