[コメント] ぐるりのこと。(2008/日)
普通の妻が自分を見失い、普通じゃなくなっていく。普通じゃない夫は、それを見て……。人生とは、一人で生きていくだけじゃない。夫婦の人生の形。080705
橋口監督は、自身のジェンダー性のせいか、マイノリティや傷ついた人は優しく描くが、普通気取りの人には冷たく、嫌らしさに満ちた描写をしてきた。それは今回も同様で、普通だった主人公夫婦を優しく描くに至るために、序盤でとことん傷つける。
妻は子を失う痛みを直接。生物的に鈍い男の夫には、社会的に法廷での子殺し犯の醜さ、弱さを見せつける。そして、徐々に二人は変わっていく。
普通とされる人は鈍感なのかもしれない。鈍感でいられるのは、「たまには入院でもして一日中寝てみたい」なんてのと同じだ。しかし、鈍感なのは、逆に健康な証拠でもある。周囲に毒気を撒き散らしながら本人は元気なのが普通の人であり、それを苦々しく弱々しく受け止める普通じゃない人達がいる。そんな人達に、ちょっと幸せな気分をもたらすような作品だった。
それにしても、あの夫の強さはなんだろうなぁ。私は逃げるばっかりなので、ああいう構え方はできなかったな。モテナイ男は、見習うべきだな。
出演者でいえば、監督作品にレギュラー化してる片岡礼子は、ついに殺人犯役になっちゃったなぁ。音羽お受験殺人の犯人役に片岡で、被害者の母役が横山めぐみってのは絶妙。監督としては、子を産み育てる強さを持つ勝ち組女性みたいなのは、あんまり好きじゃないのかな。
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