[コメント] 休暇(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
塀の中の表現はとても秀逸である。死刑執行の現場を知っている多数の刑務官と、現場を全く知らない新人刑務官との対比。自分に対する刑の執行が近い事を悟った際の金田の暴れぶり、そして執行直前の儀式の際の立ち居振る舞い。強い印象を残すことは間違いない。
そして、普通の生活における表現にも秀逸なものがある。結婚披露宴での酔客のスピーチシーンにおける、刑務官たちの表情は、現実とかけ離れたイメージを勝手にしゃべられ、かつそれに反論することが出来ない苦悩をあらわしていたと思う。これもかなり印象の強いシーンである。
だが、残念なことにこの映画、最も重要なポイントであるはずの「1週間の休暇のために支え役をやることの是非」について逃げを打っている。平井(小林薫)は三島(大杉漣)に「人の命を何だと思っている?」と叱責され、「あなただってこれで飯を食わせているでしょうが!」と突っぱねる。これでは、平井の苦悩が見えない。結婚式を控え、大事な時期に死刑執行に携わるというのは、普通に考えればありえない選択である。そこまではちゃんと示しておきながら、それでもなぜそういう選択をするのかと言う点において、描き方が甘いのである。理路整然としたものは必要ないが、平井がなぜその結論に至ったかは、丁寧に描くべきであると思う。本来そのための塀の外のパートのはずなのであるが、実際の休暇中のシーンが大半で、いかに妻の連れ子との関係を構築するかに話がシフトしてしまっている。それも重要なのは理解するが、若干フォーカスがずれていると思う。
以上のように若干の違和感は残るが、総じて良作である。
(2008.06.22 TOHOシネマズららぽーと横浜)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。