[コメント] 不滅の熱球(1955/日)
映画中の最初の試合は、ノーヒットノーランを達成する阪神戦。スタンドには、司葉子が応援に来ている。司、めっちゃ若い。眉間のニキビが目立つぐらい若い。司がヒロイン。初デートで待ち合わせるのは、湯島の聖堂か。社の上に「大成殿」と見える。都会の中の高台のロケーションだ。その後、トンカツを二人で食べる。オヤジは藤原釜足。店を出て、すぐの感覚だが、浅草の地下鉄入り口で、号外が配られる。盧溝橋事件の号外だ。この後、隅田川の鉄橋や、夜の繁華街のシーンでも、号外売りが描かれる。繁華街のシーンは、背景 のネオンサインの美術がいい。
池部−沢村は、甲種合格なので、すぐに召集されることになるが、応召するまでの試合で、司が応援に来ないと調子が出ない、という描写は、ちょっと情けない感じがする。出征してからの訓練場面で、手榴弾投擲の練習シーンがあり、遠くへ投げ過ぎて、兵舎の窓を割る、というような場面がある。きっと事実なのだろう。中国戦線のシーケンス、戦闘シーンの演出は、まあまあ気合が入っている。
右手を負傷して予備役に入り、チームに戻るが、調子が出ずに悩む日々が続く。こゝも、司葉子と再会し、結婚することで、調子を取り戻す、という見せ方になっているのは、一貫性があるが、少々情けない気がする。司が側にいないと駄目な人、というキャラになってしまっている。
さて、私が全編で一番良いと思ったシーンは、赤ちゃんを授かったかも、と司が打ち明ける場面だ。さらに、同じ日に、雨天で試合がノーゲームになり、早く帰宅するのだが、玄関で赤紙を受け取る。この後の司とのやりとりの演出も見事だ。
エンディングのフィリピンの戦場場面は、スタジオセット丸出しのチープさだが、逆に、幻想的な効果が出ている。日本兵の死体の間を、ひとり彷徨い歩く池部−沢村。こゝから後楽園球場に繋ぐ処理も、映画らしくていい。
#備忘
・巨人軍の監督、藤本定義は、笠智衆。司葉子の父親に清水将夫、母親は滝花久子、叔父さんに北沢彪。芦屋の豪邸に住んでいる。なぜか、母親の滝花だけが関西弁を喋る。
・司の科白で「夏休みは大阪の実家に帰る」と云う場面があるが、芦屋の人が、「大阪」に帰るって云うやろか、と思ってしまった(云う人もいるやろけど)。
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