[コメント] 水の中のつぼみ(2007/仏)
妖しくいけない空気を全編に漂わせながらも、清楚に、そして鮮烈に「憧れ」を描いているのではないだろうか。
観終わった直後、「わかるっ、わかるぞ」と心の中でこぶしを握りしめるほど、共感してしまった。
しかし、それが何故なのか、何だって自分がこの映画に、そしてどこに、こんなに共感してしまったのかが、さっぱりわからなかった。
自分には、同性(男)を好きになったことはないし、シンクロどころか水泳だってあまりやったことがない。ましてや日本の片田舎で中学、高校を過ごしているのだから、この映画の舞台となったフランスやらとはまったく環境が違う。この映画の登場人物たちとは、言ってみれば住む(あるいは生きてきた)世界が違うのだ。
それなのに何故?映画館を出て、しばらく歩きながら、この映画のことを思い出していた。そして唐突に思いいたった。
美しく、自分の心を一瞬にして奪った人への憧れ、初キスへの憧れ、セックスへの憧れ、そしてその憧れゆえに、はたから見ればこっけいで狂おしいほど焦がれてしまう姿。
やがてその憧れていたものへ、追いついたと思い込んでそれまでの情熱がさめていく空しさ。でも、けして追いついてなどいないし、手に入ったわけでもないのにさめてしまう。この「憧れ」の虚ろさ。
そのすべてを描いた映画ではないだろうか。
その気恥ずかしさ、こっけいさ、狂おしさこそ、強い共感を呼び起こしたものではないだろか。
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