[コメント] ダークナイト(2008/米)
戦後、豊かな国力を盾に正義を主張し続けてきたアメリカの戸惑いのようだ。080904
漫画設定を上手く利用しながら、善悪二元論を問い続けていく展開は、正直、私の頭ではついていけないくらいの密度だった。
現実的な価値観に生きるマフィアや警官などは、利害で善悪の間を移動する。しかし、純粋な悪としてのジョーカーは徹底的に悪であるし、まだまだ悩み多きバットマンも純粋な善である「正義のヒーロー」のあり方を模索する。
時に、善悪は表裏一体。表が無ければ裏もない。表ばかりの人間も油断すれば裏へと変わる。逆さに吊るされたジョーカーは、カメラの向きを上下逆にされて、きちんと頭を上にした映像にて講釈を垂れる。あたかもそれが正論であるかのように。
禅問答のような内容ではあるが、事件や人間模様をきちんと絡めた息つく暇もない展開とド派手なアクションだから、深く考えずに見ても十分面白い。むしろそうすべきかもしれない。
長時間の作品ながら全米で大ヒット中と聞けば、アメリカという国も、911以降の戦争に関わるうち、そろそろベトナム戦争以来の苦悩を覚え始めたのだろうか。劇中のバットマンのように。
アブグレイブと同色の囚人服を着た連中と一般市民とが生きのびるために出した答え、それこそが、国民のあるべき姿として監督が提示したかった価値観のように思う。
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