[コメント] 山羊座のもとに(1949/英=米)
『レベッカ』と『汚名』と『パラダイン夫人の恋』という先行作品に使用されたアイデアとの類似性が明確で正直新味がない。しかし、こうしたテーマの選定やこだわり方がまさにヒッチコック的なのだ。そのことと作品の出来栄えがつながらなかっただけの話。
世評は不評のようだ。とはいいながらも、このドラマの本質に関わるオーストラリアという風土の表現やフラスキー屋敷の中の長回し、特に、螺旋階段を使っての1階と2階の高低を感じさせる流麗な撮影、コスチューム劇風のロマンティックな配色、ラストの雨の夜のヘンリエッタの部屋の編集と構図など、いたるところにヒッチコック監督の夢幻的なエロチックさがあふれており、ヒッチ・ファンならばやはり見て損はしない作品だ。
配役もほぼヒッチコック好みになっている。イングリッド・バーグマンが全盛期の美しさを発揮しているし、マーガレット・レイトンがヒッチコック風の女性として異彩を放つ。また、本作品のジョゼフ・コットンといい、『汚名』のクロード・レインズといい、ヒッチコックは男の嫉妬の表現が大変にうまい。同様に『めまい』のジェームズ・スチュワートや本作のマイケル・ワイルディングのように他人の妻である女性に魅かれていく男の表現も大変にうまい。この二つの男の系列の行く先に(多分極北に)この二つの系列を併せ持つノーマン・ベイツが生まれるのだ。
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