何よりも中井貴一だ。年齢的にはベテランの彼が、マキノの魔法によって初々しい次郎長に姿を変える。笑いの要素もあちこちに散りばめられたステップを軽々と跳ね踊り、それでいていざというときには男も惚れ惚れとする男ぶりを見せてくれるのだから大したものだ。このテクニックは馬鹿にはできない。

そして、既にトウの立った女優である鈴木京香も彼の手にかかれば愛らしいご新造さんだ。中井との純愛ぶりは些かこそばゆい気分に囚われてしまうが、そこを自然に見せるのが監督の腕だろう。

そして岸部一徳がガッチリと舞台を締める中で、子分たちが泣き、笑い、殺陣の閃きを見せる。それはラストに至るまで充分に溜め込まれ、それがラストで一気に爆発する。ここまでで暴走をさせない監督はさながらこの映画の大親分だ。難を言えば敵役が軽薄ではあるが、これは主役をこれだけ魅力的に見せるに必要な犠牲だ。目を瞑るとしよう。

マキノ姓の継承、これだけの粋を見せられれば、充分に納得できる。