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[コメント] コドモのコドモ(2008/日)

季節を大事に撮り、ときに激しく雨を降らせ、丁寧にカットを積み重ねてファンタジーとしての語りに現実性を吹き込んでいる。しかし力強く映画に楔を打ち込むべき「決め」のカットが弱い。甘利はるなのいくつかのクロースアップや教室中の児童が一斉に立ち上がるカットがそれだ。悪くはない。が、もっと興奮がほしい。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ところで、この映画における大人の描かれ方はいったいどうしたことだろう。その仕方には大いに問題があったとは云え教え子のためを思う模範的な教師たろうとしている麻生久美子、いかにも好人物そうな塩見三省の教頭、果ては娘たちに向かって「顔を見ればあなたたちのことは何でも分かる」とか何とか嘯く理想的な母親であるはずの宮崎美子までもが甘利の妊娠にいっさい気づかないという事態。それは「映画」や「漫画原作」ならではの御都合主義(「子供の力の偉大」を描くための方便)の域を超えて、もはや「大人に対する不信」の表明としか私には受け取れなかった(やや紋切型に陥っているPTA連の描き方などもそう)。もちろん、そのこと自体が映画としてよい/悪いと云っているのではない。ただ一見優しげな顔をしたこの映画が、大人なんか信用できない、いかに「よき大人」であろうと子供に対してはどこまでも無力・無能である、という残酷な突きつけをしてきたことに、私はいささか面食らってしまった。

(評価:★3)

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