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[コメント] お国と五平(1952/日)

モノクロスタンダードの撮影が充実、全てのショットが一幅の画であり、腰を落とした物語とも似つかわしい。こんなに相性がいいのに、ナルセが山田一夫と組んだのは本作が唯一であるようだ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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戯曲「お国と五平」は1922年、「春琴抄」は1933年の発表。春琴はお国の発展形に違いない。お国に春琴のような狂気走った処のない常識的な人物であった。

そして狂気は山村聰が持っていく。奇怪な演技は彼が時折みせる裏技(『河口』とか)。大谷崎の原作(未読)はディスカッション・ドラマで、終盤、大谷友右衛門と山村が愛と死を巡って延々議論するらしい。これは台詞を削るのが大好きなナルセの得手では決してなかろう。ディスカッションは中途半端で山村はただの変な人で終わってしまっている。「俺は臆病だ、卑怯侍だ、君たちの不義の秘密とひきかえに助けてくれ」とはいったい何なのだろう。まあ、だからこそ唐突な奇怪さが異常に印象に残ったとも云えるが。

ベストショットは木暮と大谷が寺のお堂で寄り添っていると亭主の母である三好栄子が拝みに来る超自我の制裁のような件。藤原釜足の変な医者は、変な山村への橋渡し的演出なのだろうか。

(評価:★4)

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