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[コメント] レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで(2008/米)

♪眠りかけた男たちの夢の外で目覚めかけた女たちは何を夢見るの(井上陽水)女は「目覚め」のための産みの苦しみの中で自滅するしかなかった。アメリカでは50年代、日本でも一世代前のリアルな物語。とはいえ、現在、果たして状況は変わったのか?
ツベルクリン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







結末はそういう比喩としてもよくできているなぁと思う。

全編を通じて男女の感覚のズレが辛辣なほど明確に描かれていて、恐らく女達は同時に「目覚め」の時期を迎えているのだが(レオ&ケイト夫婦だけでなく、隣家の夫婦が「浅はかだ」と笑う場面でも、笑う夫と泣く妻の感覚はまったく違う)、仕事の忙しさに紛れて?あるいは男性優位という社会の前提に浸かりすぎて?女達の「目覚め」に想像力を働かすことができない(できたとしても戸惑うばかりだ)。しかし感覚としてはどこかでそれに気づいていて、「(女が男なみの強さを持つようになることで)妊娠させることでしか自身の『』を確認できない」というある男の言葉(精神病と言われるのは、それが実は正しいが故に耳をふさぎたいことを指摘してしまう彼の能力によるのだ)が図星であることは分かるのだろう。

この「女の悲劇」は、男にとって経済成長が個人の豊かさを増すことに繋がった時代、具体的にこの映画に即して言えば、「子が父よりもよい地位・生活を得る」という時代が経済成長の達成と共に終わった後に、いったい何を夢見ればいいのか分からず、あくまで会社内での出世と家庭の幸福の追求くらいしか思いつけず、そして今度は、そんなふうに夢見ることができない男を、夢に満たされた女が理解できないという「男の悲劇」と表裏一体でもあるわけだ。

ラストの補聴器のボリュームを下げる場面は、現代への直接の問いかけでもあるように思う。男は本当に女の言葉に耳を傾け、理解できているのか(逆もまた可)、と。

(評価:★4)

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