[コメント] ロルナの祈り(2008/仏=ベルギー=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
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2時間ずっと主人公の女の心臓の音が聞こえているようなのだ。空気は柔らかいのだがピシッと冷たい感覚がこちらに伝わってくる。彼女の、そして彼女を取り巻くすべての人たちがすぐそこにいるように思える。目の前に行われていることが映像でのことだと思えないリアル感とスピード感に溢れている。彼女の表情を見るまでもなく彼女の肉体を通して彼女の愛への目覚めを僕たちはすんなり受け入れている。
リアルだ。やはり新しい映像だと想う。例えば彼女がコートを脱ぐ。上着を取る。ブラとパンティ1枚になるが、何かダサい下着だ。かわいそうだ。僕らが考える間もなく彼女はブラを取る。すぐさまパンティも取る。(脱ぐという感覚じゃないのだ。)子供のような偽装結婚相手の夫との愛らしく哀しいそれでいて強い愛のセックスシーンだ。感動的だ。彼らのぎりぎりの生活感がいとおしいのだ。加害者であるべき女が本当の真実の愛に目覚める重要なシーンだ。
男は本当に泣き上戸のようないたいけな子供だ。彼女も大人ぶってはいたが、本当の愛を知らずその意味でも十分子供だったのだ。二人が初めて愛を知り、大人になったものの、でも彼女には絶望的な現実が待っていた、、。
ダルデンヌ兄弟の映画をずっと見続けているが今回は本当に身が震えたなあ。生きるために金が必要であるが、それでも彼女は愛を初めて感じた男の殺害の片棒を担いでしまったのだ。何という残酷。現実。彼女は愛を信じられる何か幻想でもいい、愛そのものを具現化したものを求める。それは彼女と初めて愛を感じた男との子供に他ならなかった。
そう、めずらしく本作は子供を題材にしていないと思ったが、子供のような夫といい、生きる糧としての信仰のような存在はやはり子供だった。ダルデンヌやはり子供を信望している。ダルデンヌはやさしい信仰作家なのだ。
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